そこで三人は大急ぎで、二階へかけのぼったが、二階もまた、なにひとつ道具とてはなく、ただカビくさいばかりである。
三人はキツネにつままれたような顔をして、剣太郎の部屋のまえまできたが、そのときだった。滋が、また、気がくるったようにさけんだのだ。
「ああ、金田一さん、にいさん、こんどは浅間山があんなところに見えている」
ああ、なんということだろう。
おとといの晚には浅間山が、ろうかの右手にある、剣太郎のへやの正面
雋景探索40の窓からみえたのだ。そして、さっきの家では、浅間山は、ろうかの左手の窓からみえた。ところがなんと、同じ浅間山が、こんどはろうかのつきあたりにある、小窓の正面にみえるのである。
ああ、これはいったいなんということだろう。
三人はしばらく気がくるったような目をして、浅間の煙をにらんでいたが、そのとき、滋がさけんだ。
「にいさん、にいさんそれじゃ、この家も、おとといの晚、ぼくたちのとまった家とちがうのでしょうか」
その声をきいたとたん、イナゴのようにとびあがったのは、金田一耕助探偵だった。
「そうだ、滋君、よくいった。きみのいうとおりだ。この家はおとといの家とちがうのだ」
「だって、だって、金田一さん、それじゃおとといの家というのは……?」
「もう一軒あるのです。これと同じ家が、どこかにもう一軒あるのです。ぼくは……ぼくは……同じ家が二軒あるのだと思っていたが、そうじゃなかったのだ。同じ家が三軒あるのです。あっ、そうだ」
金田一耕助はとつぜん身をひるがえして、階段のほうへかけだした。
「金田一さん、ど、どうしたのですか」
「立花君、滋君、きたまえ。さっきの地下道のわかれみち、……ぼくたちはみちを左へとってきたが、あそこを右へいけばいいんだ。右へいけば、おとといの家にぶつかるのだ。どくろ男は、そっ
Dream beauty pro 好唔好ちのほうへいったにちがいない」
三人はまたぬけ穴をとおって、もとの地下道へもぐりこんだ。そして、さっきのふたまたまでたどりつくと、こんどは右のほうの道をすすんでいった。
それにしても、これはなんといろう。
そっくり同じかまえの家が、二軒あるということだけでも、世にもふしぎな話なのに、さらにもう一軒、同じ家があるというのだから、まるで夢のような話である。
しかし、その夢のような話がじっさいにあるのだ。ああして、そっくり同じ家が二軒ある以上、そして、ここにこうして地下道があるところをみると、金田一探偵の推理がまちがっているとは思われない。
そうだ、たしかにもう一軒、そっくり同じ家があるのだ。そして、その三軒の家をこの秘密の地下道がつないでいるのだ。
誰が、なんのために、こんなみょうなことをしたのか、そこまでは、だれにもわからなかったが……。
三人は一步一步に気をつけて、くらい地下道をすすんでいった。
そして、まもなくわかれみちから、二百メートルほどきたが、三人はとつぜん、ギョッと地下道のなかで立ちすくんだのである。
地下道のはるかむこうからきこえてきたのは、するどい、けた
雋景探索40たましい悲鳴。ことばがぼやけて、はっきりとわからないが、なんだか、救いをもとめているような声である。
「なんだ、あれは……」