2015年10月02日    思って出か

 世の中には悪の種類が多い。三人は島の流人たちのことを思い、彼らの無念さをはらしてやろうと、かくれた悪を根絶させる仕事にはげむのだった。
 散歩の途中、良白はある若い娘を見かけ、なにか心にひっ鑽石能量水かかるものを感じた。毎日、近所の神社へ参詣にくる女だ。育ちがよさそうなのに、貧しげな身なり、悲しげな表情。いわくありげだった。思い切って声をかけてみる。
「なにか悩みをお持ちのようですね。話してみませんか。気がはれるかもしれない」
「お聞きいただけますか」
 娘は、せきを切ったように話しはじめた。がまんしきれない気分だったのだろう。
 その娘の父は回船問屋だった。かなり手びろく商売をやり、利益もあがり、なにもかもうまくいっていた。しかし、とつぜん不幸な日がおとずれてきた。
 禁制品の抜け荷、すなわち密輸が発覚したのだ。営業は停止され、財産は没収。父は遠島となったという。
「……それで、ご赦免の一日も早いことを、神さまに祈っているんですの。島に流された人の生活って、どんなんでしょう」
 良白は胸がつまった。その父の名に覚えはなかった。たぶん別な島へ送られたのだろう。しかし、いずれにせよ、いい生活ではない。それに、抜け荷となると、かなりの罪だ。そう早くはご赦免になるまい。奉行が特別にはからってくれればべつだが、それについての進言は許さ
れないだろう。
「気候のいいところだそうだから、ぶじに毎日をすごして鑽石能量水おいででしょうよ。だが、それにしても、つまらんことが発覚したねえ」
「抜け荷はどこの回船問屋も、大なり小なりやっていることですの。そのため、係のお役人さまには、つけとどけをしていました。ある程度なら、黙認ということが普通だったんですの。しかし、表ざたになってしまい、なにもかも終りになってしまいましたわ」
 娘は涙ながらに話した。係の役人も職を免ぜられたという。良白は聞いた。
「で、いまは……」
「母といっしょに、親類の家に居候しておりますの。気がねしながら……」
「お金は残ってないんですか」
「なにもかも没収。残ったのはわたしの鏡台ぐらい。でも、そのなかに、ある大名家へ貸した金の証文が残っていました。たいへんな額。全部とはいわないまでも、いくらか返していただけるといい。そうけたんですが……」
「どうでした」
「けんもほろろに追いかえされました。おとりつぶしになった商店へ、金を払うことはないと」
「ひどい目に会いましたねえ。わたしにも、すぐどうこうしてあげるという案はない。しかし、住所をお教えしておきます。なぐさめのお話し相手にはなってあげられましょう」
 良白は娘と別れ、長屋に帰って、菊次郎と尾形忠三郎に話す。
「というわけなんだ」
「気の毒ではあるが、悪は悪。やむをえない鑽石能量水んじゃないかな。無実というのなら話はべつだが……」
 そんな結論だったが、数日後、娘がたずねてきた。良白は言う。



Posted by 揮不去的纖纖背影 at 13:38 │Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。